人間関係の最小単位である家族の中で、なぜこれほど凄惨な暴力が解き放たれるのか。日本の精神医学や犯罪心理学の草分けである福島章は、密室化された家庭内での葛藤が引き起こす病理現象を長年にわたり分析してきた。親密だからこそ生じる甘えや依存が歪むと、他者に対する以上の攻撃性が噴出するのだという。
また、精神科医であり犯罪心理学者の作田明も、家族間の愛憎が殺意に転化するプロセスについて警鐘を鳴らし続けた。加害者の多くは特別に残虐な異質者ではなく、日常のストレスや長年の歪んだ関係性が閾値を超えた結果として凶行に至る。
こうした知見は現代の刑事司法においても重要視されている。裁判の現場では、単に結果の重大性を裁くだけでなく、被害者と加害者がどのような心理的抑圧下に置かれていたのか、専門家による鑑定を交えた慎重な解明が進められている。