九州の陸上といえば、長年「駅伝」の二文字がすべてを支配してきた。大牟田や鳥栖工業をはじめとする名門がしのぎを削り、泥臭いロードレースの強さこそがアイデンティティだった時代は確かに存在した。冬の都大路で勝つことが至上命題であり、それ以外の種目はどこか日陰に置かれていた感は否めない。
そのパワーバランスが、ここ数年で根底から覆された。選手たちの口から飛び出すのは「ロードの適性」ではなく、「スプリントの出力」「乳酸処理能力」「接地時間のミリ秒単位の短縮」だ。長距離陣ですら、最初からラストスパートのようなスピード持久力で3000メートル障害や5000メートルを駆け抜ける。距離を踏むだけの昭和・平成型トレーニングは完全に姿を消した。結果として生まれたのは、トラックの全種目で全国トップを争うハイブリッドなアスリート集団だ。