地図研究の第一人者であり、数々の著書で知られる今尾恵介氏は、この地域の境界線が持つ特殊性について幾度となく言及している。行政上の境界線を整える「越境合併」や「境界変更」は、本来であれば互いの自治体と地権者の合意があれば成立するはずだ。
しかし、東京都と埼玉県という広域自治体をまたぐ変更となれば話は別だ。資産価値の違い、固定資産税の税収問題、水道や下水道などのインフラ所有権の引き継ぎなど、クリアすべき課題は山積みとなる。国土地理院が発行する公式な地形図にもしっかりと刻まれているこの境界線は、単なる事務的なミスではなく、日本の地方自治制度が抱える複雑な利害関係を象徴しているといえる。