二重イメージ(ダブルイメージ)を用いた美術の歴史は古い。16世紀の宮廷画家ジュゼッペ・アルチンボルドは、野菜や果物、魚や静物を精密に描き重ねることで、人間の肖像画を作り上げるという奇想の作品を残した。パリのルーヴル美術館をはじめ世界各地に収蔵されている彼の作品は、要素を見るか全体を見るかという観察者の視点によって主役が移り変わる。まさに視覚トリックの先駆けだ。
この技法は20世紀に入ると、意識の下に眠る無意識世界を探求するシュルレアリスムの運動において大きな進化を遂げる。特にサルバドール・ダリは、一つの形状が別の物体としても成立する「偏執狂的批判的方法」を確立。風景の中に顔が浮かび上がり、あるいは馬が複数の人物群へと解体される幻想的な絵画を多数生み出した。単なる珍しい絵としての面白さを超え、観客の心理状態や解釈を揺さぶる芸術的仕掛けとして高められたのだ。