厨房の奥からは、鰹節が削られる香ばしい匂いと、出汁が煮立つ微かな音が漂ってくる。季節ごとに表情をガラリと変えるコース料理は、日本各地から直送される超厳選食材のオンパレードだ。春は芽吹く山菜の苦味と甘味、夏は鱧の繊細な切れ味、秋は松茸と戻り鰹の濃厚な響き合い、冬は脂の乗った蟹や河豚が主役を張る。
特筆すべきは、出汁の引き方に対する並々ならぬこだわりだ。水の硬度や昆布の抽出温度を分単位、度数単位で微調整し、その日の湿度や気温に応じた最高の「一椀」を仕立て上げる。一口含んだ瞬間に広がる滋味深さは、身体の細胞一つひとつに染み渡るような感覚をもたらす。