鮮魚において長年信じられてきた「鮮度至上主義」ですが、マゴチを最も美味しく味わう観点においては明確な落とし穴が存在します。釣り上げた直後や死後硬直の段階にある当日の身は、筋肉中のATP(アデノシン三リン酸)が旨味成分であるイノシン酸へと分解されておらず、身の繊維が強すぎて「ゴムのように硬く、旨味を舌で感じにくい」状態にあります。
魚類生理学の見地から導き出されるマゴチの真の食べ頃は、氷温(0〜2度)で徹底管理した熟成2日目から4日目です。活け締めと神経締めを施して血を抜き、内臓とエラを取り除いた後、リードペーパーとラップで外気を遮断して寝かせます。24時間を経過したあたりから筋膜が緩み始め、48時間から72時間でイノシン酸の含有量が最大値近くまで上昇。舌に吸い付くようなしっとりとした質感と、芳醇なコクが立ち現れます。