本作が世界的な絶賛を浴びた最大の要因は、ジャンルを自由自在に横断する圧倒的なストーリーテリングにある。前半部で展開される軽快なブラックコメディは、家政婦の交代劇と地下密室の発見を境に、一気に息もつかせぬサスペンス・スリラーへと変貌を遂げる。
伏線の張り巡らせ方は執拗なまでに完璧だ。雨が降り注ぐシークエンス、水が上から下へと流れ落ちる流動性は、富が上層から下層へ決して循環しない社会的悲劇を暗喩する。そして「匂い」という目に見えない境界線。パーク家の主人が放った何気ない一言が、ギテクの胸中で静かに燻り続け、最終盤の破滅的な爆発へとつながる導火線となった。観客は笑いの渦から突然、絶望の深淵へと叩き落とされる。