そもそも漢字の「破廉恥」には、きわめて厳格な意味が込められている。「廉」とは心が清らかで私欲がなく、行いが正しいことを意味し、「恥」とは自らの過ちを恥じる心を示す。すなわち「廉恥」とは人間として備えるべき高潔な道徳心そのものであり、それを破る(打ち砕く)ことこそが「破廉恥」の真義だ。
古代中国の思想書『管子』には「礼義廉恥、是れ国を四維と謂う」という有名な一節がある。国家を支える4つの綱のうち、廉と恥が失われれば国は滅びると教えられていた。明治時代以降の日本においても、破廉恥は武士道精神や近代道徳における重罪概念として扱われ、法廷文書や公的な倫理批判の場で重用されていたのだ。言葉の本来の重みを知ると、現代の軽やかな使われ方とのギャップに驚かされる。