加藤の政治生命を語るうえで避けて通れないのが、二代目当主・岩崎弥之助の長女と結婚したことで深まった三菱財閥との濃密な関係だ。政敵からは「三菱の番頭」と苛烈な批判を浴び、閣僚人事や政策方針に財閥の意向が働いているのではないかと疑われ続けた。
だが、近年の経済史研究が明かす関係性は、単なる主従や癒着といった借り物の言葉では説明がつかない。加藤は自らの政治基盤を確立するため三菱の資金力を高度に利用した。同時に、国家の産業近代化と国際競争力の強化には巨額資本の集約が不可欠であるという確信を抱いていた。国家利益と企業利益の境界線を極限まで攻め立てた政治資金の流儀。そこには、官僚主導の経済政策から民間の巨大資本を活用する国家構想への転換点が見て取れる。