命がけのロケーション撮影が行われたのは、東京・芝浦の路上だった。主演を務めた武田鉄矢が後年になって明かした真実は、現在の撮影現場における安全基準からすれば考えられないほど衝撃的なものだ。スタントマンを使わず、自らの肉体を巨大なトラックの前に晒す決断を下したのだという。
迫り来る巨大な車体、耳を突くブレーキ音。実際に接近してくる大型車両の圧迫感に、恐怖で足がすくみそうになりながらもカメラの前に立ち続けた。あの独特な濁音を孕んだ「死にましぇん」という発音は、計算された演技ではない。死の恐怖と興奮で喉が固まり、締め付けられた結果として生じた本物の叫びだった。後日、武田自身が「本当に死ぬかと思った」と振り返った通り、スクリーンに映し出されていたのは演技を超えた一人の人間の生身の命だったのだ。