この巻の核となるのは、鬼殺隊最強の剣士たちと、鬼舞辻無惨の腹心である黒死牟との激突だ。岩柱・悲鳴嶼行冥、風柱・不死川実弥、霞柱・時透無一郎、そして不死川玄弥。彼らが束になって挑んでもなお、黒死牟の圧倒的な力の前にはかすんで見える。その絶望感の描き方は凄まじい。
黒死牟が操る「月の呼吸」は、美しくも容赦のない刃の嵐だ。吾峠呼世晴氏の描く戦闘描写は、スピード感と静寂が同居している。読者はページをめくるたび、息をすることさえ忘れてしまう。単なる暴力の応酬ではない。そこにあるのは、武を極めようとした男の歪んだ美学だ。