海に怪物を生み出したのは日本だけではない。北欧伝承の「クラーケン」、古代ギリシャの「シークラーケン」、カリブ海沿岸に伝わる数々の海の悪魔。文化や宗教が違えど、世界中の航海者たちは同じように海上に浮かぶ未知の巨体を恐れてきた。
人間の心理学において、海は「意識の届かない無意識の領域」の象徴とされる。陸の上で文明を築いた人類にとって、一歩足を踏み入れれば自らの力ではコントロールできない黒い水面は、原初的な恐怖そのものだ。海坊主というアイコンは、人類が自然に対して抱く普遍的な畏怖の結実と言えるだろう。