日本の地方自治制度において、単一の「市」の内部に「区」を設置している自治体は、地方自治法第252条の19に基づく「政令指定都市」のみです。2026年現在、全国に存在する政令指定都市は全20市にのぼります。東京23区は「特別区」という独立した基礎自治体であるため、「区のある市」に該当するのは下表の20自治体となります。
そもそも「区のある市」が制度化された理由は、急激な都市化に伴う行政事務のパンクを防ぐことにありました。1956年に地方自治法が改正され、横浜・名古屋・京都・大阪・神戸のいわゆる旧五大都市が最初の政令指定都市として指定されました。人口が数十万人から100万人を超える規模になると、1つの市役所本庁舎だけでは戸籍・住民票の管理、福祉相談、都市計画などの膨大な業務を処理しきれなくなります。そこで、市域を複数のエリアに分割し、窓口業務を分散させるための組織として「行政区」が設置されました。
政令指定都市の指定を受けるための人口要件は、地方自治法の条文上は「人口50万以上の市」と規定されています。しかし、行政実務における国の運用基準(総務省基準)では、長年にわたり「人口100万人以上」または「近い将来100万人に達する見込みのある人口70万〜80万人以上の都市」という厳格な内規が適用されてきました。平成の大合併期(2000年代)には、市町村合併を促進する特例として一時的に「合併によって人口70万人(実質50万人台後半)に達した都市」への指定要件緩和が行われ、静岡市や新潟市、相模原市、熊本市などが相次いで指定を受ける契機となりました。