愛新覚羅溥儀と婉容の関係は、純粋な愛や夫婦の絆とは程遠いものだった。溥儀自伝『わが半生』でも触れられている通り、溥儀は婉容に対して冷淡であり、文繍という側室が皇帝に離婚を突きつけて去った後は、その怒りや怨念を婉容に向けたという。
皇帝の妻という重圧を一人で背負わされた彼女は、宮廷の暗部で息をひそめるしかなかった。溥儀の関心が専ら自身の復権と政治的保身に向けられるなか、婉容の叫びは誰にも届かなかった。孤独を紛らわせるために一日中部屋に閉じこもり、煙草と阿片を吸い続ける日々。美しかった顔立ちは次第に痩せこけ、光を失った瞳にはかつての面影すらなかったという同時代の証言が残っている。