カタカナで16文字、現地シンハラ語でも長大なこの都市名は、決してランダムな単語の羅列ではありません。サンスクリット語およびシンハラ語の古典的語彙を緻密に組み合わせた、きわめて格調高い意味を持っています。語源を形態素ごとに分解すると、その構成は驚くほど論理的です。
これらをひと続きに訳すと、「聖なる勝利をもたらす城塞都市コッテ」という壮麗な祝辞になります。
ここで多くの人が抱くのが、「移転当時の大統領ジュニウス・リチャード・ジャヤワルダナ(J.R. Jayewardene)が、自己顕示欲で自分の苗字を首都名にねじ込んだのではないか」という疑惑です。実際、国内外のメディアで格好のゴシップとして語り継がれてきました。しかし歴史的史料を紐解くと、事実はより巧妙な二重構造を持っています。
15世紀のコーッテ王国建国時、敵対勢力を打ち破った君主がこの地を「ジャヤワルダナ・プラ(勝利を増進する都)」と命名した記録が残っており、地名としての正当性は歴史上すでに存在していました。つまり大統領は、「古代の正当な歴史的地名を復活させる」という大義名分を掲げつつ、そこに自らの家名(ジャヤワルダナ)を完璧に合致させたのです。権力者が自らの名を後世に残す政治的プロパガンダとしては、極めて洗練された手法であったと評されています。なお、現地スリランカの人々の日常会話や公式文書の短縮表記では、長大なフルネームではなく単に「コッテ(Kotte)」と呼ばれるのが一般的です。