戦後の混沌から高度経済成長期、そして平成の成熟期へと至る日本の近代史の中で、孤高の存在感を放ち続けたのが色川武大と伊集院静である。二人に共通していたのは、世俗の権威や流行に背を向け、自らの美学と矜持のみを頼りにペンを走らせた姿勢だ。
彼らの作品の根底には、滅びゆくものや敗者に対するどこまでも温かい眼差しが存在する。正論や効率が尊ばれる現代社会において、彼らの残した言葉は異彩を放つ。哀愁と色気が同居する独自の文体は、伝統的な無頼派文学の系譜を受け継ぎつつも、より深化された人間探求の書として日本文学の歴史に深く刻まれている。