先進国が軒並み少子化と高齢化で縮小均衡に陥るなか、異例の持久力を見せているのがアメリカ合衆国です。国連の世界総人口推計と将来予測においても、米国は今世紀後半まで3億人台後半に向けて緩やかな成長を続けると見込まれています。
この人口動態の推進力となっているのが、年間100万人規模で流入する移民の存在です。アメリカの合計特殊出生率自体は1.6前後まで低下しており、白人富裕層を中心とする出生率は先進国並みに抑制されています。しかし、中南米やアジアからの移民とその第2世代が人口ピラミッドの土台を補強し、ハイテク産業から一次産業、対人サービス業に至るまで広範な労働力を供給し続けています。
ただし、現場の取材からは決して平坦ではない現実が見えてきます。テキサス州やアリゾナ州の国境地帯では不法越境者の収容能力が限界を突破し、公立学校の教育費や医療費の財政負担をめぐって地域住民と自治体が激しく対立。保守層とリベラル層による「移民の是非」をめぐるイデオロギー闘争は、大統領選や連邦議会選挙のたびに国家を二分する最大の争点となっています。経済成長のために移民を必要としながら、その受容によって社会統合が揺らぐという、大国の構造的ジレンマがここにあります。