米大手スポーツメディアであるESPNによる果敢な調査報道は、この未曽有のスキャンダルの全貌を暴く皮切りとなった。当時のスポーツジャーナリズムが浮き彫りにしたのは、単なる金銭の流出劇にとどまらない、依存症がもたらす人間関係の破壊プロセスだった。誰もが「誠実な通訳」と信じて疑わなかった男の裏側に、どれほど深い闇が潜んでいたかを鋭く突きつけたのだ。
「誰も見抜けなかった。身近にいた者ほど、彼の作る嘘の完璧さを信じ切っていた」。取材に応じた米国のベテラン記者は語る。周囲の目をごまかし続けた巧妙な手口の陰で、何も知らされずに生活を共にしていた妻の存在は、個人犯罪がいかに無関係な家族の人生までをも巻き込み、踏みにじっていくのかを痛烈に物語っている。