原作者のヤマザキマリは、自身が長年過ごしたイタリアでの生活体験と、日本特有の風呂に対する深い愛着をみごとに融合させた。彼女が描いた古代ローマと現代日本は、一見すると遥かな時空と地理に隔てられている。しかし、「湯に浸かり、日常の重圧から解放される」という人間の根源的な欲求において、両者は完全に同調していた。
彼女の筆致は単なるカルチャーショックの笑いだけに留まらない。異文化を盲目的に崇拝するのではなく、互いの良さを無邪気に面白がり、真摯に学び合うルシウスの愚直さ。そこにこそ、国境や時代を超えた普遍的な人間愛が流れている。最終回で提示されたのは、どんなに文明が発展しようとも、人が風呂に入って「極楽、極楽」とため息をつく瞬間こそが最高の幸せであるという、シンプルで揺るぎない真理だった。