この楽曲がリスナーの涙を誘う理由は、単純なハッピーエンドでも絶望的な別れでもない、二人の絶妙なすれ違いと揺るぎない献身が描かれている点にあります。特に英語圏の文化や言葉の綾を踏まえることで、詞の奥深さがより鮮明に立ち上がってきます。
まず注目すべきは、タイトルの核である「Time after time」という慣用句です。辞書的には「何度も繰り返して」「再三」という意味ですが、サビで「If you're lost(迷子になったら)」「If you fall(倒れたら)」という条件節とセットで使われることで、「あなたがどんなピンチに陥っても、そのたびに私は駆けつける」という無償の誓いへと昇華されています。
また、2番の「Suitcases of memories(思い出のスーツケース)」という表現は、旅立ちや別れを連想させます。関係性が終わりを迎えつつあることを悟りながらも、心の中には相手と過ごした記憶がぎっしりと詰まっている状態を比喩的に描写。「The drum beats out of time(ドラムがリズムを外す)」という一節も秀逸で、音楽的な言葉を使いつつ、不安や焦燥によって乱れる主人公の心拍数を巧みに表現しています。