矢島操の代名詞とも言えるのが「掻き落とし(カキオトシ)」という古くから伝わる装飾技法だ。素地の成形後、表面に白化粧土を施し、それが乾ききる前の絶妙なタイミングで竹へらや金属の道具を使い、表面を削り取っていく。削られた部分からは素地の暗い土色が露出し、削り残された部分が白い図柄として浮かび上がる。
彼女の掻き落としは、単なる表面装飾にとどまらない。線の一本一本に速度と強弱があり、器の上に生き生きとした呼吸を与える。モノクロームのグラフィックのようなシャープさを持つ一方で、手仕事特有の揺らぎが残る。この対比こそが、見る者の目を惹きつけて離さない第一の理由だ。
さらに、黒と白の世界に鮮烈な「赤」や「緑」を差す色絵の技法が加わる。伝統的な九谷焼や伊万里焼の色絵とは一線を画す、自由で絵画的なモチーフ。植物の伸びやかな枝葉や幾何学的なサラサ文様が、土の質感の上で独特のリズムを刻んでいる。