華やかなスペイン美術の光とは対照的に、人間の内面にある影と孤独を強烈に描き出した画家がいる。長崎ゆかりの異才・鴨居玲だ。キャンバスに塗り込められた重厚な絵具の層、酒に酔いしれる老人たちの哀愁、自画像の鋭い眼差し。美術手帖などの批評誌でも幾度となく再評価されてきた彼の筆致は、観る者の胸に刃のように突き刺さる。
長崎という土地は、異国情緒という甘美な言葉だけでは語り尽くせない。歴史の荒波と傷跡、祈りと再生の記憶が地層のように積み重なっている。鴨居玲が描いた人間の実存は、この港町が本質的に抱える陰影と共鳴し、展示室の空気をぴんと張り詰めさせる。