1982年の日本の音楽シーンを席巻した『聖母たちのララバイ』は、同年の『第24回日本レコード大賞』で大賞の大本命と目されていました。しかし、年末のステージでその栄冠を手にすることはありませんでした。
当時の日本レコード大賞の選考内規には「外国人作家による作品、あるいは外国曲のカバー・翻案は選考対象から除外する」という厳格な国籍条項・純国産規定が存在していました。ジョン・スコットとの共同クレジットとなった本作は、規定に抵触すると判断され、審査対象から外される苦杯をなめました。
一方で、同年の『第13回日本歌謡大賞』では大賞を受賞し、『FNS歌謡祭』でもグランプリを獲得するなど、その楽曲価値は他機関によって十全に証明されました。形式的なルールに阻まれた悲劇は、かえって大衆の心に「無冠の最高傑作」としての神話を刻みつける結果となりました。