この法的・生態学的な分岐点がもっとも顕著に表れている現場が、世界自然遺産に登録された奄美大島だ。環境省が主体となって推進する「奄美大島ノネコ管理計画」は、日本の生態学・生物多様性を防衛するための象徴的な事例と言える。
山中に定着した野猫は、国の特別天然記念物であるアマミノクロウサギやケナガネズミ、ルリカケスといった貴重な島固有種を捕食し、壊滅的な打撃を与えてきた。元々は人間が島に持ち込んだ猫が野生化したものであり、人間の都合が生んだ負の遺産とも言える。
現場では自動撮影カメラや捕獲罠を用いた管理運用が昼夜を問わず続けられている。捕獲されたノネコは保護され、譲渡への道が模索されるものの、野生化が極度に進んだ個体を人間に慣れさせる工程は困難を極める。命の選別という重い倫理的問いと、絶滅危惧種を守るという至難の命題の間で、現場の苦闘は今も続いている。