ソチでの戴冠を語る上で欠かせないのが、カナダのトロント・クリケット・クラブで指導を仰いだ名将ブライアン・オーサーコーチの存在だ。当時、羽生は自らのスケート技術を極限まで高めるため、海外へ拠点を移す決断を下していた。
オーサーが授けたのは、単なるジャンプの技術指導にとどまらない。大舞台におけるセルフコントロールと、体力を極限まで効率化する「勝利のための戦略」だった。連日のプレッシャーや報道陣の熱狂から若き選手を守り抜き、メンタルを一定の波に保つオーサーの卓越した手腕。指導者と選手という枠を超えた強い信頼関係があったからこそ、2014年ソチ冬季オリンピックという極限のプレッシャーがかかる舞台でも、己の滑りを貫き通すことができたのだ。