紙の資料や画面越しの映像をどれだけ見ても得られない感覚が、実際の震災遺構には満ちています。現地を訪れた来訪者が一様に口にするのは、「津波の高さに対する想像力の限界」です。
例えば、「震災遺構 気仙沼向洋高校」に足を踏み入れると、地上約12メートルの高さにある校舎4階のベランダに、ひしゃげた乗用車がそのまま引っかかっています。教室の天井には津波で巻き上げられたヘドロの跡が残り、黒板には避難直前の書き込みが残されています。SNSや訪問者アンケートには、「教科書で『津波が4階まで到達した』と文字で読むのと、自分の頭上に車がぶら下がっている光景を見るのとでは、恐怖の次元がまったく違った」「海が見えない場所なのに、ここまで波が来たという事実に足がすくんだ」という声が数多く寄せられています。
また、遺構の多くには「震災伝承館」が併設されており、地元の語り部によるガイドが行われています。現地で長年活動する語り部の方々の言葉は、単なる事実の解説にとどまりません。「あのとき、もし裏山へすぐに登っていれば」「自分は大丈夫だと思い込んでしまった」という、生存者だからこそ語れる後悔と生々しい記憶が、来訪者の「自分ごと」としての防災意識を揺さぶります。