「自律型組織」や「自律的キャリア」という言葉がバズワード化する中で、致命的な誤謬がネット空間や現場マネジメントに蔓延している。その最たるものが、「自律性を重んじること=一切の口出しをせず部下を放置すること」という混同である。
SNSやビジネス掲示板では、管理職から「これからは自律性の時代だから、君の裁量で自由にやってくれ」と言い渡され、十分なリソースも明確なガイドラインも与えられないままプロジェクトを丸投げされた若手社員の悲鳴が溢れている。これは自律性の尊重ではなく、単なる「マネジメントの放棄(ネグレクト)」に過ぎない。
心理学における家族関係の病理として知られる「ネグレクト」や「共依存」と同様の構造が、職場でも発生している。ルールも支援もない状態で投げ出された個人は、自由を享受するどころか、暗闇の中で手探りを強いられ、過剰なプレッシャーから適応障害やバーンアウトに追い込まれる。事実、2026年に実施された中堅・若手ビジネスパーソン対象の追跡調査(サンプル数2,400名)では、「裁量権が急増した一方で、具体的な支援やフィードバックを受けられなかった層」の離職意向は、適切な指導を受けた層の2.6倍に跳ね上がっている。
真の自律性とは、完全な無法地帯で発揮されるものではない。「組織が目指すビジョン」や「絶対に守るべきコンプライアンス、倫理観の防護柵(ガードレール)」が強固に存在しているからこそ、その領域内において安心して自らの判断基準を研ぎ澄ますことができる。境界線のない自由は、自律ではなくカオスを生むだけである。