「写真のほうがリアルに決まっているじゃないか」——そう考えるのは早計だ。レンズを通した写真は確かに実物を正確に記録するが、イラストには「描き手の解釈」と「乗り手の記憶」というフィルターが加わる。金属の冷たい質感、エキゾーストパイプが焼けた青紫色のグラデーション、夜の高速道路で流れる街灯の光芒。これらを強調し、時に歪曲させることで、写真以上の「走っている瞬間のリアリティ」が立ち現れる。
都内在住の30代ライダーはこう語る。「自分が愛車に乗っている姿は、自分では見られない。でもイラストなら、お気に入りの峠を攻めている自分の姿や、夕暮れの海沿いを走る理想のシチュエーションを完璧な画角で再現してくれる。ガレージに飾ったキャンバス画を見るたび、あの週末の風を思い出せるんです」。写真が「事実」を切り取るものだとすれば、イラストは「感情」を定着させるメディアなのだ。