レシピ本に必ず書かれている下処理工程ですが、そもそもきつねうどん油抜き理由を科学的に理解している人は多くありません。油揚げは製造工程で植物油により高温で揚げられており、表面から内部の気泡に至るまで油の膜で覆われています。この油膜は疎水性(水を弾く性質)を持つため、そのまま煮汁に入れても水分を吸い込むことができません。
熱湯でしっかりと油を洗い流すことで、油の分子が熱湯中に遊離し、スポンジ状になった大豆タンパク質の網目構造に空洞が生まれます。この空洞こそが、後から煮汁をたっぷり抱え込む貯水タンクの役割を果たすのです。さらに、流通段階でわずかに酸化した表面の油臭さを取り除くことで、出汁本来の上品なアロマを濁らせない効果もあります。
調理現場で実践されている油揚げふっくら煮るコツは、油抜き前の「麺棒転がし」から始まります。油揚げの上に菜箸や麺棒を置き、軽く体重をかけてコロコロと転がすことで、内部の接着した豆腐組織が剥がれ、袋状に開きやすくなると同時に気泡が均一化します。その後、たっぷりと沸騰させた湯で弱火で2〜3分しっかりと煮沸し、ザルに上げて粗熱を取った後、手のひらで挟むように優しく押して水気を絞ります。雑巾のように強く絞ると繊維が潰れて復元しなくなるため、適度な水分を残す力加減が仕上がりを大きく左右します。