これほどのお酒好きであることから、「お酒を飲みながら小説を執筆しているのではないか」と誤解されることも少なくありません。しかし、金原さんの創作姿勢は極めてストイックかつ規律正しいものです。
執筆中は極限まで集中力を高めるため、「書いている間は一切アルコールを口にしない」という鉄の掟を自らに課しています。朝から夕方にかけての執筆時間は研ぎ澄まされたシラフの状態でキーボードを叩き続け、物語の世界と対峙。そして、予定していた原稿を書き終えた瞬間、日中の緊張感を一気に解き放つ合図としてプシュッと缶を開けます。
このオンとオフの鮮烈な切り替えこそが、彼女の驚異的な執筆ペースと作品クオリティを支える原動力です。2026年に谷崎潤一郎賞を受賞した『アンソーシャル ディスタンス』や、その後の作品群に登場する飲酒シーンの生々しい手触りは、過酷な執筆作業と日常の晩酌を両極で生きる彼女だからこそ描けるリアリティの結晶といえます。