商店街を脇道に折れると、傾斜地に這うように建つ古い木造店舗群が現れる。昭和30年代の看板建築やタイル貼りの外壁をそのまま生かしたコーヒースタンドやアトリエが、ここ数年で急増した。スクラップ・アンド・ビルドではなく、古いものの「傷み」や「歪み」を味として魅せるデザイン手法だ。
「新築では絶対に作れない、時間が醸し出した陰影がある」と、路地裏で古本カフェを営む店主は語る。かつては廃墟化が懸念されていた物件が、坪単価を抑えたスモールビジネスの拠点として次々と生まれ変わっている。こうした小規模な再開発が点から面へと広がり、アーケードの「外側」にまで回遊性を生み出している点が、現在の熱海の強みだ。