心理学には、強いストレスや不安に直面した際、無意識に未発達な過去の発達段階に戻る「退行現象」という概念がある。日本心理学会などの研究でも論じられるこの現象は、精神の防衛メカニズムの一種だ。幼少期の無条件に愛されていた状態を再演することで、傷ついたメンタルを自己回復させようとしているのである。
精神科医の土居健郎は、その名著『甘えの構造』の中で、日本人の対人関係における「甘え」の独自の重要性を指摘した。土居説によれば、「甘え」とは他者の好意を無条件に期待し、相手との境界線を無防備に溶かし合う心理的欲求である。彼氏が二人きりで幼児語を使うのは、まさにこの「甘え」の純度を極限まで高めたコミュニケーションと言える。