2019年の夏、週刊誌が放った一報は日本中に衝撃を与えた。闘病中の一時退院時、池江璃花子がなべおさみの自宅を訪れ、患部に手をかざして病を癒やすとされる「手かざし療法」を受けていたという内容である。昭和の喜劇俳優でありながら、一部で霊的な力を持つと噂されていたなべおさみと、近代医療の最前線で抗がん剤治療に耐えていたトップアスリート。この極端なコントラストが、人々の不信感を煽る結果となった。
だが、関係者の証言を丹念に洗い直すと、実態は「民間療法への傾倒」という単純な構図とは異なる。極限状態に置かれた患者やその家族にとって、知人から勧められた励ましやアドバイスを断り切れない心理は想像に難くない。医療行為を放棄してオカルトに依存した事実は一切なく、あくまで主治医による高度な治療が根幹にあった。現在、両者の間に日常的な交流や特別な関係性は確認されておらず、当時の接触は過酷な闘病期における限定的な一幕に過ぎなかったことが判明している。