当時の子ども向け漫画といえば、熱血ハンサムなヒーローやスポ根ものが全盛を誇っていた。そこに突如現れたのが、運動も勉強も駄目でドジばかり踏む野比のび太という「どこにでもいる平凡以下の子ども」だった。完璧ではない主人公が、未来のひみつ道具に頼りながらも時に失敗し、少しずつ成長していく姿は、圧倒的な共感を生んだ。
日常の延長線上にSF(すこし・ふしぎ)を巧みに持ち込んだこの作品は、従来のSFギャグ漫画の枠組みを根底から破り捨てた。同時に、子どもの視線に徹底して寄り添う温もりと切なさをあわせ持つ、上質な児童文学としての品格をも備えることとなったのである。