スープの寸胴から立ち上る湯気は、どこか甘く、そして力強い。店主が毎日深夜1時から取りかかるスープ作りには、現代のラーメン界における「引き算の美学」が凝縮されている。ベースとなるのは、地元で育まれたブランド鶏と、厳選された3種類の煮干し、そして昆布だ。余分な脂や血抜きを徹底的に行い、温度管理を1度単位でコントロールしながら14時間じっくりと煮詰めていく。
「煮込みすぎればエグみが出ますし、弱ければ旨味が開かない。毎日、素材の状態も湿度も違いますからね。スープと対話しながら火加減を調整する作業は、何度やっても緊張しますよ」と店主は静かに微笑む。寸胴を覗き込むその眼差しは、職人というよりも化学者の実験現場を思わせる繊細さに満ちている。