「入居者の顔ぶれが頻繁にかわり、挨拶を交わすことすら一度もなかった。深夜2時や3時になると、強面の人々が数人単位でエレベーターに乗り込んでいく」
同じ階に住む40代の女性は、数年前から漂っていた異常な雰囲気をそう振り返る。ゴミ出しのルールは破られ、廊下には見慣れぬ男たちが立ち塞がる。時折、部屋の奥から怒号や重い物体がぶつかる音が響くこともあったという。
恐怖心から管理組合への通報をためらう住民も多く、長年にわたり沈黙が破られることはなかった。密室化された空間が、住民の心理的な死角を生み出していたのだ。