カメラが回る現場において、二人の関係性は極めてスリリングだった。日常を撮影されることに不慣れだった荒井氏だが、カメラを構える妻の前では徹底して自然体であり続けた。撮影中、思わぬハプニングや意見の食い違いが生じることもあったが、監督は容赦なくカメラを回し続けたという。
「夫を客観的な被写体として見つめる映画監督の眼差し」と「最愛のパートナーに向けられる情愛」。この二つが交錯する撮影現場の裏側には、圧倒的なプロフェッショナリズムと夫婦愛の絶妙なバランスが存在した。荒井氏が義母のためにスープを煮込む台所の光景は、演出を超えた真実のノンフィクションとしてスクリーンに深く刻み込まれている。