端的に結論を述べるなら、オルトランを使用した野菜は、農薬登録票に記載された「適用作物」「希釈倍率または散布量」「収穫前日数」の3大原則を守っている限り、問題なく食べられます。日本の農薬登録制度は国際基準(CODEX)に準拠しており、人が一生涯にわたって毎日摂取し続けても健康影響が出ない「一日摂取許容量(ADI)」をベースに、厳密な安全係数(通常100倍)をかけて残留基準値が定められています。
しかし、なぜここまで安全性が疑問視されるのか。その背景には、オルトラン特有の「浸透移行性」という性質があります。一般的な接触型殺虫剤が葉の表面に留まるのに対し、オルトランの有効成分であるアセフェートは、根や葉から吸収されて植物の導管を通じて全身に行き渡ります。この作用のおかげで、薬剤が直接かかっていない新芽や葉の裏に潜む害虫まで長期間退治できる仕組みです。
裏を返せば、「水で表面を洗っても成分は洗い流せない」ことを意味します。野菜の内部に取り込まれたアセフェートは、植物自身の代謝活動や太陽光、微生物の作用によって時間をかけて徐々に無毒な物質へと分解されていきます。この分解が進み、国が定めた安全基準値を完全に下回るまでに必要な猶予こそが「収穫前日数(PHI: Pre-Harvest Interval)」です。この期間を1日でも削ってしまえば、安全の科学的根拠は消失します。